山本クリニック

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VACCINE

MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)

麻疹と風疹の予防接種として行われるMRワクチン。麻疹(measles)のM、風疹(rubella)のRを取って、MRワクチンと呼ばれている。
麻疹ウイルスと風疹ウイルスの毒性を減らしたウイルスを使っている、生ワクチンである。麻疹ワクチンはニワトリの細胞を、風疹ワクチンはウズラの細胞を使って作られている。
MRワクチンを接種することで、麻疹と風疹を同時に予防することがでる。定期接種といって、予防接種法に基づき定期的に公費で接種するワクチンである。

麻疹

疫学

ヒトからヒトへの空気感染(飛沫感染症)の他に、さらに、飛沫感染、接触感染など様々な感染経路で感染する。我が国では通常春から夏にかけて流行する。
罹患者の95%以上が予防接種未接種である。
近年の麻疹流行の特徴は、流行の多い県と少ない県が隣り合っていることである。成人麻疹(18歳以上)の患者発生が報告されているが、2001年は過去3年間で最も多い報告数となっている。これらの症例の多くは入院を要するような比較的重症例であると考えられる。

病原体

原因ウイルスである麻疹ウイルスはParamyxovirus科Morbillvirus属に属し、直径100~250nmのエンベロープを有する一本鎖RNAウイルスである。AからHのcradeに分類され、genotypeは22種報告されている。日本で主に流行しているのはD3,d5タイプであり、ワクチン株はAタイプである。

臨床症状

麻疹ウィルスはカタル期の麻疹患者の咳の飛沫、鼻汁などを介して気道、鼻腔および目の粘膜上皮に感染する。感染後2~4日間、気道粘膜上皮の局所で増殖し、リンパ球、マクロファージなどに感染してリンパ節に運ばれる。その後白血球に感染したままで血液中に入り、第一次ウィルス血症を起こす。通常発熱は、若干低下し再び高くなるとともに、発疹が出現する。発疹は斑丘疹で、毛髪線から始まり、顔面頸部に出現し、手足に向かって広がる。合併症は5歳以下あるは20歳以上で多い。下痢が8%、中耳炎が7%、肺炎が6%起こると報告されている。
<前駆期(カタル期)>
感染後に潜伏期10~12日を経て発症する。38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感があり、不機嫌となり、上気道炎症状(咳漱、鼻漏、くしゃみ)と結膜炎症状(結膜充血、目脂、羞明)が現れ、次第に増強する。
乳幼児では消化器症状として下痢、腹痛を伴うことが多い。
発疹出現の1~2日前に頬粘膜にやや隆起し紅暈に囲まれた約1mm径の白色小斑点(コプリック斑)が出現する。
<発疹期>
カタル期の熱が1℃くらい下降した後、半日くらいのうちに再び高熱が出現する。特有の発疹が耳後部、頸部、前額部より出現し、翌日に体幹近囲部に出て、2日目には四肢末端までおよぶ。発疹出現は感染後約14日後である。発疹ははじめ鮮紅色扁平であるが、やがて隆起融合して、不整形斑状疹となる。
<回復期>
発疹出現後3~4日間続いた発熱も回復期に入ると解熱し、全身状態、活力が改善してくる。
ウィルスの分離は前駆期の発熱時に始まり、第5~6発疹日以降は検出されない。

治療・予防

特異的治療法はなく、対症療法が中央となるが、中耳炎、肺炎など細菌性の合併症を起こした場合には抗菌薬の投与が必要となる。それ故に、ワクチンによる予防が最も重要である。
ワクチンによる免疫獲得率は95%以上と報告されており、有効性は明らかである。接種後の反応としては発熱が約20~30%、発疹は約10%に認められている。いずれも軽症であり、ほとんどは自然に消失する。

風疹混合ワクチン

病原体

風疹ウイルスはTogavirus科Rubivirus属に属する直径60~70nmの一本鎖RNAウイルスで、エンベロープを有する。血清学的には亜型のない単一のウイルスである。上気道粘膜より排出されるウイルスが飛沫を介して伝幡されるが、その伝染力は麻疹、水痘よりは弱い。

臨床症状

感染から14~21日(平均)の潜伏期間の後、発熱、免疫、リンパ節腫脹(ことに耳介後部 、後頭部、頚部)が出現する。
多くの場合、発疹は紅く、小さく、皮膚面よりやや降起して全身にさらに数日間を要することがある。
リンパ節は発疹の出現する数日前より腫れはじめ、3~6週刊位持続する。
ウイルスの排出期間は発疹出現の前後役1週間とされているが、解熱すると排出されるウイルス量は激減する。
風疹に伴う最大の問題は、妊娠前半期の妊婦の初感染により、風疹ウイルス感染が胎児におよび、先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)が高率に出現することにある。
先天異常として発生するものとしては、先天性心疾患、難聴、白内障、網膜症などが挙げられる。先天異常以外に新生児期に出現する症状としては低出生体重、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、間質性肺炎、髄膜脳炎などが挙げられる。

治療・予防

特異的治療法はなく、対症的に行う。発熱、関節炎などに対しては解熱鎮痛剤を用いる。
風疹に対する免疫を有しない女性が妊娠した場合に風疹の初感染を受ければ、先天性風疹症候群発生の危険が高いことは明らかであり、現時点では幼児期のみならず中学生に対しても風疹ワクチン接種を積極的にすすめる必要がある。

学校保健法における取り扱い

風疹は第二種の伝染病に定められており、登校基準としては、紅斑性の発疹が消失するまで出席停止とする。

四価ワクチン(ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ)

【4種混合(DPT‐IPV)・3種混合(DPT)・2種混合(DT)ワクチン】
 不活化ワクチンとトキソイドの混合ワクチンです。DPT-IPV(ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ)、DPT(ジフテリア・百日せき・破傷風)ワクチンとして、標準として1期初回接種は20日以上(標準的には56日まで)の間隔をあけて3回接種後、6か月以上の間隔をあけて(標準的には12~18か月の間に)追加接種を1回行います。また2期として11から12歳時(小学6年生)にDT(ジフテリア・破傷風)ワクチンを接種します。回数が多いので、接種もれのないように注意が必要。確実な免疫をつくるには、決められたとおりに受けることが大切ですが、万一間隔があいてしまった場合でも、はじめからやり直すことはせず、規定の回数を超えないように接種します。

ジフテリア

ジフテリア菌の飛沫感染(咳やくしゃみ等により感染すること)で咽頭、鼻に感染します。症状は高熱、喉の痛み、犬が吠えるような咳、嘔吐などで、偽膜(炎症により膿などが加わってできた膜様のもの)を形成して窒息死することもあります。発症2から3週間後には菌の出す毒素によって心筋障がいや神経麻痺をおこすことがあり注意が必要。
わが国では1981年にジフテリア・百日せき・破傷風(DPT)ワクチンが導入され、1999年以降の発生はない。しかし、かつては年間8万人以上の患者が発生し、そのうち10%程度が亡くなっていた病気である。

百日せき

百日せき菌の飛沫感染でおこります。百日せきは風邪のような症状ではじまり、せきがひどくなり、顔をまっ赤にして連続的にせき込むようになります。せきの後、急に息を吸い込むので、笛を吹くような音がでることがあります。乳幼児はせきで呼吸ができず、くちびるが青くなったり(チアノーゼ)、けいれん(ひきつけ)をおこすこともあります。
 また肺炎や脳症などの重い合併症をおこしたり、乳児では命を落とすこともあります。1950年から百日せきワクチンの接種がはじまって以来、患者数は減少してきています。当時は菌体の入ったワクチンでしたが、現在では副反応の少ない精製ワクチンを使っています。

破傷風

破傷風菌は土の中にひそんでいて、傷口から人へ感染します。傷口から菌が入り身体の中で増えると、菌の出す毒素のために、口が開かなくなったり、けいれん(ひきつけ)をおこしたり、呼吸筋の麻痺で死亡することもあります。また、菌の侵入部位は特定できないほどの軽い傷の場合もあります。この病気は人から人へ感染するのではなく土の中にいる菌が原因ですが、日本中どこでも菌はいますので、感染する機会はあります。

ポリオ

ポリオウイルスは人から人へ感染します。便中に排泄されたウイルスは間接的に他の人の口から入り、咽頭または腸から吸収されて感染します。ウイルスは3から35日間(平均7から14日間)腸の中で増えます。しかし、ほとんどの例は不顕性感染(病気としての症状が出ず、知らない間に免疫だけができる感染のこと)で、終生免疫(免疫が身体の中に一生涯にわたって記憶され、その病気にかからないですむこと)を獲得します。症状が出る場合、ウイルスが血液を介して脳・脊髄へ感染し、麻痺をおこすことがあります。(麻痺の発生率は1,000から2,000人に1人)。ポリオウイルスに感染すると100人中5から10人は、カゼ様の症状を呈し、発熱、頭痛、嘔吐があらわれ麻痺が出現します。一部の人はその麻痺が永久に残ります。呼吸困難により死亡することもあります。
 わが国では昭和35年にポリオ患者の数が5,000人を超え、かつてない大流行となりましたが、予防接種の導入により流行がおさまり昭和55年から国内での自然感染例は報告されていません。
 現在でもアフリカ等の地域ではポリオの流行があり、日本に入ってくる可能性もあります。

流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)

流行性耳下腺炎(mumps)は2~3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症であり、通常1~2週間で軽快する。最も多いの合併症は髄膜炎であり、その他髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを認める場合もある。

病原体

本疾患の原因であるムンプスウイルスはパラミクソウイルス科のウイルスである。大きさは100~600nmで、重いに6つの構造タンパクを有している。

臨床症状

本症の臨床経過は、基本的には軽症と考えられている。2~3週間の潜伏期間(平均18日前後)を経て、唾液腺の腫脹・圧痛、嚥下痛、発熱を主症状として発症し、通常1~2週間で軽快する。
接触、あるいは飛沫感染で伝搬するが、その感染力はかなり強い。ただし、感染しても症状が現れない不顕性感染もかなりみられ、30~35%とされている。鑑別を要するものとして、他のウイルス、コクサッキーウイルス、パラインフルエンザウイルスなどによる耳下腺炎、(特発性)反復性耳下腺炎などがある。
合併症としての無菌性髄膜炎は軽症と考えられてはいるものの、症状の明らかな例の約10%に出現すると推定されている。

治療・予防

流行性耳下腺炎およびその合併症の治療は基本的に対症療法であり、発熱などに対しては鎮痛解熱剤の投与を行い、髄膜炎合併症に対しては安静に努め、脱水などがみられる症状では輸液の適応となる。
効果的に予防するにはワクチンが唯一の方法である。
ワクチンの副反応としては、接種後2週間前後に軽度の耳下腺腫脹と微熱がみられることが数%ある。重要なものとして無菌性髄膜炎があるが、約1,000人~2,000人に一人の頻度である。
有効な抗ウイルス剤が開発されていない現状においては、集団生活に入る前にワクチンで予防しておくことが、現在取り得る最も有効な感染予防法である。

水痘

水痘は、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus ; VZV)によって起こる急性の伝染性疾患である。19世紀の終わりまでは、水痘と天然痘は明確に区別されていなかった。1875年Steinerによって、水痘患者の水疱内容を接種することによって水痘が発症することが示され、1888年von Bokayによって、水痘に感受性のある子どもが、帯状疱疹の患者との接触によって水痘が発症することが確認された。1954年にThomas Wellerによって、水痘患者および帯状疱疹患者いずれの水疱からもVZVが分離されることが確認された。その後の研究によって1970年代に日本で水痘ワクチンが開発され現在水痘の予防に使用されている。

疫学

水痘ウイルスの自然宿主はヒトのみであるが、家庭内接触での発症率は90%と報告されている。発疹出現の1~2日前から出現後4~5日、あるいは痂皮化するまで伝染力がある。

臨床症状

潜伏期は2週間程度(10~21日)であるが、成人では発疹出現前に1~2日の発熱と全身倦怠感を伴うことがあるが、子どもでは通常発疹が初発症状である。発疹は全身性で掻痒を伴い、紅斑、丘疹を経て短時間で水疱となり、痂皮化する。
臨床経過は一般的に軽症で、倦怠感、掻痒感、38度前後の発熱が2~3日間続く程度であることが大半である。成人ではより重症になり、合併症の頻度も高い。

治療・予防

通常、石炭酸亜鉛化リニメント(カルボルチンクリニメント;カチリ)などの外用が行われる。二次感染をおこした場合には抗生物質の外用、全身投与が行われる。抗ウイルス剤としてアシクロビル(ACV)があり、重症水痘、および水痘の重症化が容易に予測される免疫不全者などでは第一選択薬剤となる。その予防は感染源のヒトとの接触をさけることが重要である。
水痘が流行している施設や家族内での予防については、患者との接触後できるだけ早く、少なくとも72時間以内に水痘ワクチンを緊急接種することにより、発症の防止、症状の軽症化が期待できる。
また最近では、高齢者に対する帯状疱疹の予防として、水痘ワクチンを接種する試みが海外および国内でも始まっており、今後の結果が期待される。

学校保健法における取り扱い

第二種の伝染病に属する。すべての発疹が痂皮化するまで出席停止とする。

肺炎球菌

肺炎球菌は体力低下時やお年寄りになって免疫力が低下してくると、発生します。
肺炎球菌が引き起こす主な病気は肺炎、気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎などがあります。ペニシリン耐性菌が増えているため、治療が大変困難になってきています。
そのため、肺炎球菌ワクチンによる予防がますます大切になってきています。
日本では抗生物質の効きにくい肺炎球菌の頻度は現在約30~50%を占めていると言われています。

病原体

肺炎球菌は健常者であっても、口腔内や鼻腔などに必ず存在する弱毒性の常在菌であります。ペニシリン耐性菌もペニシリン感受性の肺炎球菌も病原性や増殖能力などの特徴はなんらかわりないと言われています。

治療・予防

外から帰ってきたときは、うがいをしたり、手を洗う等、基本的なことを励行することが大切です。
肺炎球菌ではペニシリンや経口セフェム薬、テトラサイクリン、マクロライド、ニューキノロンなどを使用しますが、耐性菌の増加が、地球規模で問題となっています。
肺炎球菌ワクチンの接種も重要です。

肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌は80種類以上の型があります。このワクチンは1回の接種でいろいろな型(23種類)に効くように作られています。これで肺炎球菌による感染者の80%を予防できるとの報告があります。接種対象者は2歳以上で肺炎球菌による重篤な疾患にかかる危険の高い人に行います。肺炎球菌ワクチンは一部の人をのぞいて予防接種として扱われており、2回目の接種をすると、反応が強くでることがありますので再接種はしないことになっています。
米国厚生省(DHHS)の疾患管理センター(CDC)が、65歳以上の高齢者やハイリスクグループの人たちに強く推奨しているためで、また、日本においては、現在、再接種ができないことになっていますが、米国においては、1997年から特にハイリスク(65歳以上の高齢者の方等)の人達に再接種が勧められています。
そういう意味では日本は遅れていることになります。

肺炎球菌(プレベナー)小児用

肺炎球菌は小児における中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎、敗血症及び細菌性髄膜炎の主要な起炎菌で、インフルエンザ菌と並び、小児の細菌性感染症の主な原因である。
肺炎球菌は病原性が強く、全身感染症、いわゆる侵襲性肺炎球菌疾患の場合には症状の進行が速く、重傷度も高く乳幼児および小児における死亡の主な原因となっております。肺炎球菌の約90種類ある血清型のうち乳幼児に重篤な感染を引き起こす主な7種の肺炎球菌に免疫反応を惹起するワクチンとしてプレベナーが開発されました。

小児に重篤な感染を引き起こす血清型7種(4,6B,9V,14,18C,19F23F)による、小児の侵襲性肺炎球菌感染症(細菌性髄膜炎、菌血症)を予防する日本ではじめてのワクチンです。

インフルエンザ菌b型(アクトヒブ)

インフルエンザ菌b型(Hib)は、小児の髄膜炎の原因菌の1つです。
インフルエンザ菌性髄膜炎は、その約5%が死亡、約25%に後遺症が残るという非常に予後の悪い感染症であり、毎年600人の5歳未満の小児が発症しています。

増加する小児のインフルエンザ菌性髄膜炎
感染性髄膜炎の原因には細菌のほか、真菌、結核菌、ウイルスなどがあります。結核菌をのぞく細菌による髄膜炎は化膿性髄膜炎と呼ばれ、より重篤です。化膿性髄膜炎の原因菌としては、インフルエンザ菌が最も多く、年々増加しています。

アクトヒブ接種により長期感染予防レベルの抗体価を期待できます。
対象は2~6ヶ月の乳児
初期免疫が通常3回、いずれも4~8週間で皮下に注射。
追加免疫は初回免疫後、約1年の間隔をおいて1回皮下に注射します。

百日咳

百日咳は特有のけいれん性の咳発作を特徴とする急性気道感染症である。母親からの免疫が期待できないため、乳児期早期から感染し、1歳以下の乳児、ことに生後6ヶ月以下では死の危険性が高い。百日咳ワクチンを含むDPT三種混合ワクチン接種その普及とともに、各国で発生数は激減している。

疫学

百日咳は世界的に認められている疾患で、どの年齢でもかかるが、小児が中心となる。
重症化しやすく、死亡者の大半は1歳未満の乳児である。WHOによると、世界の百日咳患者数は年間2,000~4,000万人で、その約90%は発展途上国で死亡数は約20~40万人とされています。
わが国の百日咳患者の届け出数はワクチン開始前には10万例以上で、その約10%が死亡していた。

病原体

グラム陰性桿菌である百日咳菌の感染によるが、一部はパラ百日咳菌も原因となる。
感染経路は鼻咽頭や気道からの分泌物による飛沫感染、および接触感染です。

臨床症状

1、カタル期(約2週間):通常7~10日間程度の潜伏期を経て、普通の風邪症状で始まる。次第に咳の回数が増えて程度も激しくなる。
2、痙咳期(約2~3週間持続):次第に特徴ある発作性けいれん性の咳となる。
発熱はないか、あっても微熱である。息を詰めて咳をするため、顔面の静脈圧が上昇し、顔面浮腫、点状出血、眼球結膜出血、鼻出血などが見られることがある。
何らかの刺激が加わると、発作が誘発される。また、夜間の発作が多く見られる。
合併症として、肺炎、発症原因は不明であるが、脳症も重要な問題で、乳児で注意が必要である。
3、回復期(2,3週間後):激しい発作は次第に減衰し、2~3週間で認められなくなるが、その後も忘れた頃に発作性の咳がでる。全経過約2~3ヶ月で回復する。
成人の百日咳では、咳が長期にわたるため、典型的な発作性の咳を示すことはなく、やがて回復に向かう。
軽症で診断が見逃されやすいが、菌の排出があるため、ワクチン未接種の新生児・乳児に対する感染源として、注意が必要である。これらの点から成人における百日咳の免疫状況に今後注意が必要である。

病原診断

確定診断のために、鼻咽頭からの百日咳菌の分離同定が必要である。

治療・予防

治療としては、マクロライド系抗菌薬が用いられる。これらは特にカタル期では有効である。通常、患者からの菌の排出は咳の開始から約3週間持続するが、エリスロマイシンなどによる適切な治療により、服用開始から5日後には菌の分離はほぼ陰性となる。再排菌などを考慮すると、抗生剤の投与期間としては、2週間は必要と思われる。
また、年齢、予防接種歴に関わらず、家族や濃厚接種者にはエリスロマイシン・クラリスマイシンなどを10~14日間予防投与する。

学校保健法での取り扱い

第二種の伝染病に定められており、登校基準は以下のとおりである。
○特有の咳が消失するまでは出席停止となる。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。

A型肝炎

A型肝炎はA型肝炎ウィルス(HAVウィルス)感染による。
HAVは糞便中に排出され、糞口感染で伝播するので、患者の発生は衛生環境に影響されやすい。日本では50歳以下での抗体陽性者は極めて少ない。飲食店を介した感染や海外渡航者の感染が見られる。

疫学

HAVは衛生環境が劣悪な地域では、乳幼児期の感染が主であり、こうした地域では肝炎発生率が低く、流行も少ない。流行地に渡航する前には、ワクチンを接種して、免疫を獲得しておくことが望まれます。子供の感染は症状が軽いが、高齢者では重症化しやすいので、注意が必要である。A型肝炎の発生には季節変動があり、日本では秋に少なく、冬から初夏にかけて多い。

病原体

HAVはピコルナウィルスのヘパトウィルス属に所属する。ウィルス粒子は直径27nmの裸の正20面体である。他の肝炎ウィルス同様ウィルスの増殖により細胞を殺すことはなく、肝炎は宿主免疫反応を介して起きる。

臨床症状

HAVは糞口感染で伝搬し、2~6週間の潜伏期ののち、発熱、倦怠感に続いてALT、ASTが上昇する。食欲不振、嘔吐などの消化症状を伴い、黄疸、肝腫大、灰白色便などを認める。劇症化して死亡する例をのぞき、症例によるが、だいたい約2ヶ月の経過後に回復する。A型肝炎の臨床的特徴は、発熱、頭痛、筋肉痛、腹痛などいわゆる肝炎症状が強いことがあげられる。しかし、臨床症状や肝障害の改善は早い。

病原診断

A型肝炎診断には血中のIgM-HAV抗体を確認する。治療が長引く例はIgM抗体の持続期間も長い。

治療・予防

原則として急性期には入院し、安静臥床とする。予防としては、手洗いの励行やワクチンを用いた積極的予防法が推奨される。
A型肝炎ワクチンの接種法は、3回接種します。

B型肝炎

B型肝炎は、B型肝炎キャリアの血液の輸血、不特定多数の血液に接する機会の多い人の
かかりやすい病気です。また、性行為で感染する場合もあります。成人がウィルス感染を受けると、約30%が急性肝炎を発症し、2~3ヶ月は治療を要します。まれに、劇症肝炎に進展し死亡する場合があります。

疫学

HBVの持続感染者は世界で3億人以上存在する。既感染者は20億人といわれています。HBV感染は、主に輸血、経静脈的薬物乱用など不適切な観血的医療行為などによる経皮的感染と、性交渉、分娩時の経粘膜感染によるものである。HBVの持続感染は出生時、または乳幼児期の感染によって成立し、持続感染化することはまれである。持続感染が成立した場合、大部分は肝機能性状なキャリアとして経過し、その後免疫能が発達するに従い、顕性または不顕性の肝炎を発症する。そのうち85~90%は肝機能正常の無症候性キャリアへ移行し、残り10~15%が慢性肝疾患、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌へ移行し、肝機能異常を持続する。一過性感染の場合は、70~80%は不顕性感染で、のこりの20~30%のケースでは、急性肝炎を発症する。このうち2%が劇症肝炎を発症し、致死率は70%とされている。

病原体

HBVはDNA型の肝炎ウィルスで、ヘパドナウィルス科に分類される。直径は約42nmの球状ウィルスでエンベロープとコアの二重構造を有している。

臨床症状

急性B型肝炎は比較的緩徐に発症し、微熱、食欲不振、全身倦怠感、悪心、嘔吐、右季肋部痛などの症状がみられ、黄疸をともなう。黄疸は成人例で30~50%、小児では10%以下である。重症例を除いては、1ヶ月程度で回復する。宿主の免疫能に異常なければ、以上の過程でHBVは生体から排除されキャリア化することはない。免疫能の不十分な乳幼児、免疫能が低下した人、免疫抑制剤の投与を受けている場合の感染は、キャリア化へ移行する例がある。

病原診断

B型肝炎ウィルスの診断としては、HBs抗原・抗体、HBc抗体、HBe抗原・抗体、HBV DNA検査、およびHBV DNAポリメラーゼ活性の測定が行われている。HBV感染状態ではHBs抗原が持続的に生産されており、HBs抗原が陽性であれば、B型肝炎と診断される。

治療・予防

急性B型肝炎は本来、自然治癒する傾向が強い疾患である。HBV感染予防は感染経路を遮断することである。母親がキャリアであると母子感染防止の目的で、生後すぐにB型肝炎ワクチンとHBグロブリンを投与すると新生児への感染を防ぐことができる。また、男性または女性がキャリアとわかっている場合には、結婚前に相手方がワクチンを接種して感染防止をします。B型肝炎ワクチンの接種方法は3回接種します。

子宮頚がんワクチン

子宮頸がんは若い女性で発症率の高い女性特有のがんで発がん性ヒトパピローマウィルス(HPV)の感染が主な原因です。
15~19歳の日本人女性の32%が発がん性HPVに感染していました。
発がん性HPVの中でもHPV16型やHPV18型に感染していると子宮頸がんの前がん病変の発症率が高まります。
サーバリックスは子宮頸がん発症リスクの高いHPV16とHPV18のL1タンパクを抗原としたワクチンです。
サーバーリックスは10歳以上の女性に接種することができ3回接種により、高い抗体価が得られます。
抗体価は少なくとも20年間は維持されると推計されています。

注意

サーバリックスを接種してもすべての発がん性HPVの感染を予防できるわけではありません。HPV16,HPV18以外のHPVによる子宮頸がんの発見のために、これまで通り定期的な献身による早期発見が必要であります。